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納島正弘はデザイナーのくせをしおってなかなかに文章が書ける。 それもちょっと上方落語の米朝のような洒脱な味を持っているものだから始末に悪い。 この洒脱を理解する心は温故知新のスピリッツのある無しに大いに関係している。 昔の文化人は洒落と遊び心を身に付けているべきは必定だったが、 その洒脱の感覚は敬意を払うに足る諸先達との付き合いからいわば継承された。 納島正弘の場合、おっつぁんとの遊びがこの継承のプロセスに他なるまい。 それにしても絵に描いたような遊び方である。やはり出自はデザイナーであるな、フフフ。 |
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【其の九:ホワイト号おっつぁん船員3人組のこと(2)】 | ||||
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教授:「まずは、なじみのポイントでメバルをいきますか。」 私:「了解しました。・・・ヘヘヘ。」 先生:「サビキの針も念のために・・・フフフ。」 かくして、江波のマリーナで諸費用の払い込みを済まし、我がホワイト号の進水式をとり行うことになった。 先生航海士は、船首でまさに出陣する水軍武将のごとく、腕組みをして島々を睨んでいる。さすが航海士たるもの、進むべく航路を掌握せんとしているご様子。 2等水兵の私は道具類を持って直立不動、次の指示を桟橋で待っている。 教授船長は、快心の初エンジン始動のための燃料チェック、そしてチョークを入れて、 さあ!始動!! トントントントン・・・・? トントントン・・・・?? トントン・・・・??!! アレ? トントントントン・・・・ダメ? トントントントン・・・・ドウシテ?? |
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沈黙・・・ スターターは回るがエンジンがかからない。 私と先生は先ほどのポジションからだらしなく崩れ、腰をかがめて不安な様相で教授の始動作業を見守る。自分たちではらちがあかないので、マリーナのスタッフに救援を請う、あらゆる工具を総動員して、1時間後にやっとエンジンが息をふきかえした。 もう時間も押してきたので、進水式という儀礼的なことはヤメ。さっそくホワイト号は海原へ白波たてて進むのであった。 結局この日釣果は小イワシが40尾、メバルの小さいのが10尾くらいに終わった。 |
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翌週もおっつぁんクルーは海に出た。 今度は本気の朝4時集合、宮島沖まで出陣である。狙うは良型のアジ。 意気揚々でサビキ仕掛けを投入! さあさあさあ、来るぞ来るぞ。 教授船長は「ここで、下ろせ。上げろ」と適格であろう指示を出す。 30分、1時間、全く魚信がない。3人はうなだれて、カキ筏に係留して釣ることになった。 教授:「先生、フックを筏に投げて引っ掛けましょう。」 先生:「了解!ソリャー!・・・・・??あらら!フックごと縄まで行ってしもうた!」 金属製のフックがむなしく海底に沈んでいくのが見えた。 ホワイト号の釣果はあがらず。ベテラン漁師らしい船のそばで竿出すことに。プチ漁夫の利作戦である。 教授:「先生、アンカーを打ちましょう。」 先生:「了解。」 アンカーが沈み綱がどんどん出ていく、水深が25mはありそうだ。 すると「アッ!ア〜!アンカーが全部出てしもうた!」 アンカーの綱の端が結ばれてなかったのだ。 結局その日の釣果はベラが1尾、それに比べて被害は甚大な結果となった。 おっつぁんクルーの女房たちは皆口を揃えて言うのだ「船で釣るからたくさん釣れると思ったのに、これでは陸からのほうがましなんじゃないの?」と。 おっつぁんクルー達の挑戦はまだ始まったばかりなのである。 |
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